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「本物のWebアクセシビリティー・セミナー」を受講してきました

小川貴史

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本物のWebアクセシビリティー・セミナー ?知ってる・やってるつもりになっていませんか?ユーザーが求める本物のアクセシビリティお見せします!?」を受講してきました。東京まで行って。

お題は下記の項目でした。

Flashのアクセシビリティ

アクセシビリティパネルを利用

図:アクセシビリティパネル

Flashのアクセシビリティの問題点として「音声読み上げがされない」「キーボードのみで操作が出来ない」ということがよく挙げられます。しかし「アクセシビリティパネル」の「名前」と「タブインデックス」を利用すれば、これだけでも大幅にアクセシビリティは改善されるということでした。

アクセシビリティパネルの「名前」は音声読み上げソフトで読み上げられる文章、「タブインデックス」はtabキーを押したときにカーソルが動く順番を設定する機能です。

この施策は、Flashで行う最低限のアクセシビリティでもあるということでした。

アクセシブルなFlash例

ちなみに、Flashのテキストタイプは「ダイナミックテキスト」にしないと読み上げられないようです。

ユーザーテストのポイントと、その結果をふまえた改善方法

Flashに限った話ではありませんでしたが、ユーザーテストのポイントを教えてもらいました。

  1. ユーザーテストには、サイトにまったく関わっていない人を使う
  2. パソコンリテラシーがある程度高い人を使う
  3. ユーザーの属性(全盲、色覚異常、肢体不自由者、等)ごとに、5人に参加してもらう
  4. 進行係はユーザーの手助けをしない、グッと我慢
  5. ユーザーの利用感想を鵜呑みにしない

「ユーザーの利用感想を鵜呑みにしない」というのは、例えばユーザーから「○○が使いづらい、○○というようにしたら使いやすくなる」という意見をもらった場合に「じゃあそうします」ではなく、なにが原因でユーザーは問題を感じたかを考える必要があるということです。

問題の原因が「コンテンツ」なのか「ユーザーエージェント(例えば、Webブラウザ)」なのか「ユーザーのスキル」なのかなど、これらを考慮して問題を解決していく必要があるということでした。

Webアクセシビリティ概論

以前名古屋で開催された「Webアクセシビリティ@名古屋」で講師の渡辺さんが仰っていたのと、基本的には同じ内容でした。

評価ツールはスペルチェッカーと同じ、それだけでは不十分

評価ツールでの検証は、スペルチェッカーのようにチェック項目と合っているかどうかしか見られない。中身(内容)までは理解出来ない。評価ツールでの検証だけでは限界があるので、やはりユーザーテストも合わせて行うことは必要であるし、大事だということでした。

代表的なアクセシビリティ評価ツール

Web制作者だけがアクセシビリティに責任があるという思い込みは違う

アクセシビリティを進めていくためには、実際の利用者(視覚障害者、等)、音声ブラウザを提供している開発業者、オーサリングツールを提供している開発業者、そしてコンテンツを作るWeb制作者が協力する必要がある。これらは相互依存の関係にあるからだ。

しかし、Web制作者だけがアクセシビリティに責任を感じている場合が多い。それはおかしな話。

このおかしな思いこみを打破していくためにも、Web制作者は、今後の製品に実装して欲しい具体的な機能を開発業者にフィードバックしていったり、アクセシビリティの大切さを周りに啓蒙していく、エヴァンジェリスト(伝道者)として活動する事が大事ということでした。

日本の政党を評価ツールとユーザーテストで検証、その結果発表と評価

NPO法人ハーモニー・アイによる研究発表でした。視覚障害者の方に、自民党、共産党、社民党、公明党のWebサイトで「後期高齢者医療制度の政策を調べる」という目的でユーザーテストを行い、その結果発表と評価報告です。

順位を付けるとすると下記になるそうですが、どのサイトもかなり問題がありました。ちなみに民主党がありませんが「時間がなかった」そうです。えぇー。

どのサイトもかなり問題が

色々問題があった中、「これはひどい」と思った物を挙げてみます。

  • 全政党とも、Flashはまったく読まれない。
  • 全政党とも、altが抜けている、間違っている画像が多々ある。
  • 社民党は「ヤシロミントウ」と読み上げられる。
  • 共産党の委員長「志位(シイ)」は「ココロザシイ」と読み上げられる。
  • 共産党で「JCP」と言う単語が幾度か出てくるが、略語であるためまったく意味が分からない。(JCP = Japanese Communist Party = 日本共産党)

自民党はアクセシビリティ問題外

日本トップの政党「自民党」ですが、メインメニュー「政策」にaltが無く「index/seisaku.html」とリンク先URLが読まれてしまいます。これではユーザーテストが出来ないということでストップ、問題外という評価となりました。自民党は「音声読み上げソフト」を考慮していないようです。

余談ですが「政策」のページを見ると「自民党は、音声読み上げソフト等に対応できるWebページづくりを目指しています。」と書かれています。「音声読み上げソフトには、まだ対応出来ません」ということですね。素直ですが、いつ対応するつもりなんでしょうか。

まだまだ対策が不十分なサイトが多い

2年前の調査では、95%のサイトがアクセシビリティの問題を抱えていたそうです。その頃に比べればマシにはなってきていますが、まだまだ対策が不十分な、意識が足りていないサイトが多いようですね。

視覚障害者の方による、パネルディスカッション

年齢、性別、パソコンリテラシー、住んでいる場所、障害の程度がそれぞれ違う、4人の視覚障害者の方とのパネルディスカッションが行われました。

よく使っているサイトはどこか
スキップリンクについてどう思うか
  • 便利。
  • 見出し飛ばしを使っているので必要ない。
  • 使っているが、そもそも本文がすぐ始まるようにして欲しい。
  • 便利だが、スキップリンクが利用出来ないソフトもある(PC-Talkerの事です。ちなみに解決方法もあるようです)。
Googleを使っていて、困った事はないか
  • ほとんど困らない。
  • PC-Talkerを使っているが、すぐ本文に行かないのでそれが不便。
  • 解説文(スニペット)が短すぎて、ページ内容が分からない。結局リンク先を見ないといけない。
PDFについてどう思うか
  • PDFは読まない。
  • 容量を軽くして欲しい。
  • テキストのコピーをしてソフトで読み上げさせるので、テキストのコピー許可を付けておいてほしい。
  • テキストをコピーした場合、表は崩れてしまう。表のみExcel等にして欲しい。
その他の発言
  • 勘違いされやすいが、視覚障害者でもTVは情報源、娯楽のひとつ
  • 最近YouTubeをよく使う

など、かなり貴重な意見、感想、情報を聞くことが出来ました。このコーナーが今回のセミナーの中で一番充実していたと思います。

最後に視覚障害者のひとりの方が「別にアクセシビリティの教科書みたいなサイトが欲しい訳じゃない。楽しく、欲しい情報が手に入ればそれで良い。」と言われていたのは、なるほどなと思いました。

アクセシビリティというと、どうしても「どんな施策が正解なのか、どんな技術が正解なのか」という方に目がいきがちですからね。

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読者のコメント

ミキ・オキタ
2009年5月 8日 16:13

こんにちは。ミキ・オキタです。
CNET Japanで読者ブログを書いている者です。
先日のアクセシビリティセミナー会場では、ありがとうございました。

少し時間が空いてしまいましたが、
私も当日のレポートをブログに掲載いたしました。
その際、こちらのページへもリンクさせていただきました。

【読者ブログ】- アクセシビリティセミナーレポート
http://japan.cnet.com/blog/webclip/

以上、よろしくお願いいたします。

小川貴史 Author Profile Page
2009年5月 8日 16:14

>先日のアクセシビリティセミナー会場では、ありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。
またどこかでお会いできたらいいですね。

レポートちらっと見させていただきましたが、すごく詳細なレポートですね。
またじっくりと読ませていただきます。

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