ユーザー調査から分析する高齢者のウェブ利用の在り方
シニア層のユーザー調査から「画面スクロールをしない」「限られた情報を知るだけでも納得する」「全体の構造を見て情報を探さない」などが傾向として見られました。シニア層をターゲットにする場合は、これらを踏まえてコンテンツを作成する必要があります。
5月20日に「ユーザー調査から分析する高齢者のウェブ利用の在り方について」というセミナーを受講しました。「高齢者はどのようにウェブを活用するのか、どんな傾向があるのか、どうするとウケるのか」という内容した。
シニア層のネット利用状況
シニア層のインターネット利用率は年々増加傾向にあるが、全体平均に比べると依然低い。
- 全体:78%
- 65歳以上:36.9%
シニア層へのユーザー調査
- 調査方法:アイトラッキング+パーソナルインタビュー
- 調査対象:59歳~70歳男女10人(男性7人/女性3人)
- 調査サイト
シニア層の傾向
- トップページに戻るのが好き。
- トップページが地味だったり、ビジュアルが面白くないと見る気が失せる。
- 目立っている箇所(写真や大きい文字)に注目して納得する傾向がある。全体の構造(ナビゲーションやタイトル、見出しなど)を見て情報を探さない。
- 文字が中心の情報は注目されない。読んでも最初の部分だけ。文字は記号としてとらえている。
- 文字サイズは12pxだと小さい。文字が小さいことに対する抵抗は少ないが、文字が小さい&多いと、読み飛ばす。
- 行間は広い方がよい(1.8emぐらい?)
- 白背景に黒文字は読みやすいが、黒背景に白文字は読みにくい。
- 写真が動くのがすき。音がでるのも楽しくてすき。動画など受動的な情報が好まれる。
(「郡上八幡観光協会」の音が出るFlashが評価されていた!) - カタカナ(例:バーチャルツアー、カスタマイズ、ガイドムービ)は意味が理解できない。
- 画面スクロールをしない。画面スクロールに気がつかない。
- 下に画面スクロールするよりも、ページを変えてクリックしていく探し方を好む。
- QRコードは使わない。嫌い。
- あまりごちゃごちゃしていない統一感のあるデザインが好き。
- レイアウトが整然としていると文字にも注目する。
(ソフトバンクやauなど) - 背景が黒いページは、若者向けでシニア層は相手にされていない、と感じる。
- 一覧で見られるコンテンツが好き。カタログ系コンテンツの受容性が強い。
- 1つの画面内では2階層でのメニュー構成(グローバルナビ+ローカルナビ)が理解できる限界。
主な傾向1「シニア層は画面スクロールをしない」
これは「画面スクロールバーの操作が苦手」というのもあるのですが、それよりも「下にコンテンツが続いていることに気がつかない」というのが大きいようです。文章が続いてるコンテンツで見落としが多いようですが、写真が多いコンテンツではそういうことが少ないようです。
勝手な予想ですが、写真を見るときに画面の真ん中で見ようと画面スクロールをし、その際に下にまだコンテンツが続いていることに気付く、といったことなのかと思いました。
「シニア層は画面スクロールをしない」の対策
下にコンテンツが続くことに気付かせてやればいいので、画面スクロールに連動する「続きます」と書かれた下矢印画像などを置いてやったりすると少しは防げるのではないでしょうか。動く物は好きなようですし。
主な傾向2「シニア層は限られた情報を知るだけでも納得する」
「シニア層は画面スクロールをしない」とも関係することですが、「画面スクロールしない状態で見える情報がすべての情報」と判断し、そこで得た情報で納得する傾向があるようです。
結果として、情報を発信する側が本来伝えたい情報が、必ずしもシニア層に届いていない可能性が高いといえます。しかし情報を受け取るシニア層は、「情報を得ることができた」と納得している場合が多く、十分な情報を受け取ったと認識することが多いようです。
主な傾向3「シニア層は全体の構造を見て情報を探さない」
感覚的に情報を探す傾向があるそうで、全体の構造を見て情報を探すということはできないようです。そのため、1つの画面内では2階層でのメニュー構成(①グローバルナビ + ②ローカルナビ)が理解できる限界だそうです。次のようなメニュー構成は気付いてもらえないことが多いようです。
傾向2、傾向3の対策
対策といえるのどうかわかりませんが、トップページを例に挙げると
- 伝えたい情報は上に持ってくる
- 情報にメリハリを付ける(伝えたいことは大きな画像や文字で、など)
- 直感的に選べるラベリング(メニュー文字)
- わかりやすい表現
を心がけたデザインをする、といったところでしょうか。
まとめ
シニア層の傾向は、今まで語られてきたホームページ制作のセオリーと似ているところもあります。しかし、シニア層の場合はその傾向がよりいっそう強くなっているなと感じました。
シニア層向けのサイトを構築する場合は、これらのことにいっそう神経を使う必要があると感じました。
それと「郡上八幡観光協会」のFlashが評価されていたのは目から鱗でした。私からするとアレは論外なんですが...。
セミナー講師の方が「シニア層の、特に男性はセンチメンタルでノスタルジックな傾向がある」とおっしゃっていたのですが、私たちからすると「古くさい」と感じるこのFlashを「ノスタルジック」ととらえて評価しているのでしょうか。
シニア層の方へのキラーコンテンツ
シニア層の方へのキラーコンテンツとしては「音声ガイド付きの映像コンテンツ集が有効ではないか」というまとめでセミナーは終了しました。
なるほど、そうかもしれません。
- このエントリーのトラックバックURL
- http://www.ibnet.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/1031