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セミナー「サービスデザインとUX」

小川貴史

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UXとは個々人の「うれしい」「面白かった」などの感情であり、UXDはその感情をどう与え続けていくかを計画し、量産出来るような仕組みを設計することです。

11/20にセミナー「サービスデザインとUX」に参加してきました。内容は下記です。今回はその中の「ユーザーエクスペリエンスとは何か?」についてまとめました。

  • ユーザーエクスペリエンスとは何か?
  • サービスデザイン設計法
  • ワークショップ「最悪の旅」

ユーザーエクスペリエンスとは何か?

講師は千葉工業大学の安藤先生です。

ユーザーエクスペリエンス(以下UX)という言葉はどこかで耳にしたことがあると思います。でもわかっているようなわかっていないような、非常に説明がしにくい言葉です。日本語では「ユーザー体験」と訳されます。

UXというワードは2006〜08年の間にネット界隈でいっきに広まりました。ちょうどiPadやiPhoneなど、リッチな動きをするデバイスが登場してきた頃です。そういったこともあり、さもページをめくるといった動作などがユーザー体験やUXと呼ばれる傾向があるようで「どういったことをUXというと思いますか?」という問いに対して「パッと見で直感的に使えることがUX」という答えが返ってくることが多いようです。

直感的に使えることがUX?

でも、それだけがUXなのでしょうか。

こういった誤解の元の一つに「UXは定義が非常に難しい」ということがあります。「ISO 9241-210」で一応定義はされているようですが、解釈の仕方が人それぞれで、UXをどう捉えるかという枠組みしか出来ていません。そういったこともあり「UXというのは観点として理解することが重要で、どういう見方をすればUXを理解できるかということを知ることが重要。」なのです。

ISO 9241-210におけるUXの定義
製品やシステム、サービスの利用、および/もしくは予想された使い方によってもたらされる人々の知覚と反応。

ここまでのUXまとめ

定義にある「予想された使い方」というのがわかりにくいですね。UX(ユーザー体験)とは、ユーザーが製品やシステム、サービスの購入や利用、所有など、一連の流れや過去の経験を通じて「面白かった」「思い通りに使えた」などと感じた体験のことを指すそうです。「予想された使い方」は「過去の経験」が深く関わってきます。


4つのUX

UXは期間で4つにわけることが出来ます。

図:4つのUX

予期的UX(利用前)
経験を想像した段階(利用前)にあるUX。製品を手に入れる前に「こんな風に楽しめるのではないか」などと想像する段階。
一時的UX(利用中)
瞬間的、短期的なUX。経験中のUX。iPhoneが直感的に使える、など。
エピソード的UX(利用後)
利用後に「こういう良い経験をした」「僕こんなの買ったんだよ、ほらこんな風に使えるんだよ」といった話す時などの体験・経験したことのUX。
累積的UX(利用時間全体)
トータルとして、この製品はどういうものなんだろうというのを理解する時に想起されるUX。次の体験にものすごく影響を与える。

ここまでのUXまとめ

UXは製品を利用する前(使っていない時間)も対象となっています。「モノ(製品)」自体に触れていなくても「コト(出来事)」に触れることで「モノ」に関するUXはすでに発生しているということです。4つのUXの中でも「予期的UX」はかなり重要な気がします。

僕の中では「ゼルダの伝説」が予期的UXの代表格ですね。このソフト名を聞くだけで「あの楽しかった体験がまた出来る!」と感じてしまいます。


ユーザビリティとUXの違い

ユーザビリティは上記の4つのUXでいうと「利用中:一時的UX」に含まれます。

ユーザビリティ
人を測定器と見なし、特定の状況下における「モノ」の品質(有効さや効率、満足度、使いやすさ)を測る指標。
UX
どんなに有効さや効率がよかったとしても、それとは別に実際にユーザーがどう思うのか、どう感じているかという「コト」に対する感情に重きを置いた指標。

ここまでのUXまとめ

UXは「面白かった」「思い通りに使えた」「嬉しかった」といった、ユーザビリティ(使いやすさ)を含んだ、より大きな概念を示すために造られた言葉になるようです。ユーザビリティという大きな海でもがいていたら、そこはUXという宇宙の一部だった、お釈迦様の手のひらの中だったということでしょうか(謎)。


利用意欲で大きく変わるユーザーの評価

人が長く物と関わる時、特にインタラクティブを駆使している時、どうして使い続けているのか、その理由を調べていくと「興味・知識」と「積極性・自信」が大きく関わっていることがわかります。

興味・知識(製品関与)
その製品に関して、どれくらい思いが強いのか。どれくらい知識があるのか
積極性・自信(自己効力感)
「自分はちゃんとできる、やれている、成長している」と感じているか、自信を持っているか。

SEPIA分析法の視点

図:SEPIA分析法の視点

例) 料理への利用意欲
  • マニアユーザーには、素材だけの調味料「味の素」
  • 期待先行ユーザーには、手軽に楽しめる「クックドゥ」
  • ミニマム利用ユーザーには、 「できあいの惣菜」

ここまでのUXまとめ

UXは「どうしたら利用意欲を高めてあげることが出来るのか」を考えることが重要です。ようはモチベーションを高め、長く楽しく使ってもらうためにコントロールしてやる(導く)ことが重要だということですね。

「製品関与」が高いか低いか、「自己効力感」が高いか低いかという4つのアプローチに合わせてUXを提供すること、そして成長することでどう変化していくのか(どうなって欲しいのか)を考えておくことが重要だそうです。「人を育てる・教育する」のに似てますね。

こういった「どんな体験をしてもらうのか計画すること」や「みんなに体験をしてもらう仕組み(量産をする仕組み)を作る」といった体験をサービスとしてどう提供していくのか、提供するための仕掛けをどうするのか、という設計(デザイン)をすることを「ユーザーエクスペリエンスデザイン(以下UXD)」と呼ぶそうです。


UXとUXDの違い

上記でUXDが出てきましたが、UXとUXDは違います。この違いを意識することで、UXに対する理解が深まります。

UX
  • UXは、製品やシステム、サービスの利用、および/もしくは予想された使い方によってもたらされる人々の知覚と反応。
  • UXは、ユーザの過去の経験の前後関係のインタラクションの結果。
  • UXはユーザーを研究することで理解が出来る。
  • UXはユーザーの個人的なもの。
UXD
  • UXDはどんなUX(個人的な体験)をしてもらうかを計画すること。
  • "体験"が量産・再生産される仕組みを作ること。

ここまでのUXまとめ

UXはユーザー側の話です。ユーザーの意欲や理解といったものの相互作用の積み重ねが実はユーザー側にあり、そういうことを理解して意欲の調整(デザイン)をしていくのがUXDです。ユーザーがどう感じているのかを意識しながらデザインをし、使い続けてもらうために意欲をキープさせる仕組みを考えるのが大事だということですね。


全体まとめ

セミナーに参加したことで、何となくですがUXに対しての理解が進んだと思います。大雑把にいうと、UXとは個々人がどういうときに「うれしい」「面白かった」「思い通りに使えた」「続けていこう」と感じるかを知る、ということで、UXDはその感情をどう与え続けていくかを計画し、量産出来るような仕組みを設計する、ということですね。

ですが「じゃあどのようにUXDをするといいのか、効果的なのか。ビジネスにどう展開していくのか」ということに関しては、まだまだモヤーとしています。心理学の世界というか、マーケティングの世界というか、UXの奥深さを感じます。

懇親会でも安藤先生から面白い話を聞くことが出来ました。KA法というのがあるらしく、キモは「その他の価値」なんだそうです。また折を見てまとめてみたいと思います。

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